人が仕事だけに没頭できる期間は短い

 尊敬する韓国の友人がキャリアを諦め家族事情で帰国することになった

 最近尊敬する韓国人が家族事情で帰国すると聞いた。ソウル大学卒業後に日本の大学院に進学し、外資系戦略コンサルティングファームに就職した才女で、いわゆるエリートだ。僕よりも圧倒的に素晴らしい経歴を持つ彼女を尊敬しており、世界を担ってほしいを思っていた。

 

 10年前希望に満ち溢れて東京に降り立った彼女は、もう居ない

 退職するに際して、彼女と話した所、年初に母がなくなり、一人ぼっちになった父が不憫なため国に帰ることにしたとのことだった。僕からすれば経済規模で劣る国に行くということは一種の都落ちであり、キャリアとしてはダウンすることを彼女も気付いていたと感じた。きっと10年前に日本に来た時の彼女は、より経済規模の大きい外国で自分の可能性を試していくということにワクワクして東京に降り立ったはず。そして10年後の今、家族事情で帰国することになった。彼女ほど才能がある人がキャリアを断念するというのはもったいないというのが率直なところで、それについて寂しさを感じている。

 この出来事から、自分のことだけを考えられる時間はとても短いということを実感せざる負えなかった。しがらみなく全力で暴れられる時期というのは新卒時から35歳くらいまでで、早い人は病気や家族事情により30歳前に終わってしまう。事実、29歳でガンに大学の先輩や、29歳でⅠ型糖尿病になった同僚がおり、全力で働けない人が増えている。35歳になると介護等が増え、徐々に増えていくだろう。

 

 人生は長いが旬の時期は長くないので全力を尽くした方が良い 

 人生100年という言葉の通り、医療技術の発展とともに人の寿命は伸びて文字通り人生は長くなった。だが、しがらみなく全力で働ける期間は短い。昔は結婚するタイミングが早かったからもっと短かったのかもしれないが、それでも人生ほどは長くなっていないだろう。旬の時期は「しがらみ」だけでなく「エネルギー」にも影響を受ける。残念なことに、歳をとるごとに男性ホルモンの低下に合わせてエネルギーが低下し、ガッツがなくなる。そして、目標についても目指すべきタイミングがある。僕は何歳になっても医師や弁護士を目指しても良いと思うが、目指すべきタイミングはあると思っており、医師であれば18-20歳、弁護士であれば18-26歳くらいではないかと考えている。その時であれば仲間もいるし、周りから共感やサポートを得やすく、失敗してもやり直しをしやすい。そしてその後のキャリアも長い。

 まとめると「しがらみ」がなく、「エネルギー」があり、「その目標を目指すのに良いタイミング」が重なる時期を「旬」と読んでいるが、そんな旬の時期は長くない。22歳から30歳前半までだろう。

 

 彼女を通して自分の人生の旬の時期が終わったことを突きつけられた

 22歳で日本に留学した彼女にとってこの10年は正に人生の旬といえる時期だった。なぜこの旬が終わったということに対して胸を打たれるんだろうか?それは同級生である僕にも同じことが当てはまるからだ。僕の人生の旬の時期は終わりかけている。もしかしたら終わったのかもしれない。彼女を通してその事実を明確に突きつけられ、今までは心の中で言い訳をしていたが逃げられず、寂寥を感じた。

 旬が終わった人間として心の折り合いをつけていかなければならない。